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そらがしてきなしごとをみつけるまで10 「雨と自転車」

雨の日、自転車にのる。
すると、徒歩とは違って傘に守られることもなく、車や電車のように車体に守られることもなく、服に雨が当たる。
いずれはそれが肌に沁みて、今の季節ならば、寒さも相まって、足先手先の感覚が遠のく。そして、だんだん中心部にだけ感覚が集まる。
漕ぎながら横を見ると、林と林の間が、木の枝と地面の土の間が、薄く繋がって見える。
あの時、私は何をと、考え始めると、思い出されるのは本当に冷たい、湿った空気。それが鼻の奥をつく、痛さ。

スリップしないように、側溝に落ちないように、と気をつけているのにあっという間に加速する、坂道でのスピード。
かぶっていたフードがずれ落ちて、耳がむき出しになると、風の音でほぼ何も聞こえない。
どんどん周りも暗くなるし、あたりは誰も見えない、不安になる。
それでも身体の芯まで寒なってはいけないから、漕ぐ力が大きくなり、息があがり、心拍数が上がる。
胸うつ力が大きくなると、胸の真ん中に熱さがたまる。そしてそれが身体中にあふれでるその間に、息が深くなる。
赤く冴えた耳、まつげの雨粒、絞れない焦点、逆立つうぶげ。
ああ、詩がかきたい、あの時きっと、そう思っていた、思い出した。

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