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とり麺や五色 13周年記念の詩

Client: Chicken broth noodle Goshiki
Writing: Go Uchida
Chef: Noriyoshi Nishizawa


2022年5月に13周年を迎えた長野県松本市のラーメン店・とり麺や五色と、周年記念として詩とのコラボレーションを企画。ウチダゴウが書き下ろした詩作品を読み込み、五色店主・西沢寬佳氏が詩をラーメンで表現、周年記念の期間限定ラーメンとして提供されました。5月14日から27日までの10日間、提供数は想定の100杯を超えて150杯に。会期最終日を待たずに売切となり、盛況のまま幕を閉じました。

Notes:
周年を記念する詩を書くにあたって、テーマとしたのは「初心」。開業に至った思いやそれまでの経緯、開業後の試行錯誤、店の味を好いてくれる顧客への思い——毎年訪れる周年月に店主が思いを馳せるであろうこれらはすべて、店主にとって「初心」に立ち返らせてくれるキーとなっている。しかし「料理人として初心を思い出させる物語」そのものを題材にすると、詩のなかのストーリーが限定的なものになり、奥行きも乏しくなる。店頭で実際に詩を読むのは、店主ではなくラーメンを食べに来る客なので、詩の題材は「多くの人が経験したことのある初心を思い出せる物語」にした。そのなかで選んだのが、多かれ少なかれ誰もが経験するだろう「初恋での、思うようにいかない異性との距離感」。13周年記念企画を開催する時期に合わせて〈はる〉の詩に。人生と時間の一瞬が行き交う場〈せんろぞい〉を舞台に、揺れる心情と記憶の往来を象徴する〈のぼりでんしゃ〉〈くだりでんしゃ〉のそばで、全国各地で見ることのできる花であり、すなわちありふれた恋心の〈ぽぴーのはな〉が、〈ぼく〉のあの頃の未熟さや純情を、淡く切なく描いている。ラーメンを啜るたびに〈ちかづいたりはなれたり〉する動作、箸を進めるにつれて〈ただそれだけのしあわせで/ぼくのはるはみたされてしまった〉と空腹が満たされる様子、すべて食べ終えた後の寂しさと満足感が漂う〈いっしゅん〉〈きおく〉としての〈ぷらっとほーむ〉など、ラーメンを食べるときのシチュエーションにも通じうる言葉も散りばめた。あるいはこの詩を〈きみ〉の視点で読むのも面白い。ポピーの花言葉は「恋の予感」であるが、同時に「夢想家」でもある。常に新たな挑戦を楽しみ、自らの高みを追求する店主の姿にも重なる。


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