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REPORT: 一乗ひかる個展「野性と超越」

会期:2020年8月15日(土)〜 8月30日(日)
作家:一乗ひかる
企画:してきなしごと



2020年8月。生命たちが涼しげに、しかし激しく優雅に躍動する、真夏の穂高の森で、書籍・雑誌の表紙や広告ビジュアルの分野での活躍が著しい、イラストレーター・一乗ひかる氏の個展を開催しました。長野県下初となる記念すべき本展には、現存する過去作品が展示。避暑観光地として愛される安曇野には、一見すると、静かで、穏やかな空気感が漂うエリアですが、同時に、大小様々な生命が、日々凌ぎを削るサバイバルな現場。松林の静謐な木陰を抜けた先、ギャラリーの扉を開けて広がる、一乗氏のワイルドかつトランセンデント(=超越的)な世界観を、コロナ禍のなか、県内外から老若男女多くの方が来場、鑑賞してくださいました。来場者のなかで、特に顕著だったのは、10代後半から20代にかけて、デザインやアートを志す美大生から一乗氏の作品をSNSや実際の商品で触れたファンの方々まで、若い世代の方たちが次々と来場、作品の細かなところまで目を皿にして鑑賞していく様でした。

個展のタイトル「野性と超越」は、開催にあたって打ち合わせを重ねた際に、一乗氏から託され、過去の個展名やこの展示に向けた思いをもとに、名づけさせていただいたもの。東京ではない場所に、作品が旅すること。詩人の切り盛りするギャラリーでの個展開催を通じて、一乗氏が新しい体験を求めていること。“できなくなった”ことに閉塞感を感じてしまいやすかった2020年、しかしいっぽうで新たに生まれている“できるようになった”ことを感じて、時代や限界を突破してゆくこと。様々な「これまで」を、自らの生きる強さ(=野性)で乗り越え(=超越)、「これから」へ進んでいく。そんな意志を込めたタイトルでしたが、その熱情は、一乗氏だけでなく、会場を訪れたすべての来場者にも伝播していたように思います。

個展に合わせて、一乗氏のイラストと、ウチダゴウの詩によるコラボポスターを、本企画展のスペシャルグッズとして制作、販売しました。一乗氏によって、企画展タイトル「野性と超越」に由来するイラストが描かれたのち、そのイラストからイメージされる詩を執筆・ハンドライティングし、してきなしごとがデザインさせていただきました。届いた、4人の女の子たちのイラスト。添えてあった「たまたまこの国に生まれてこの人生をおくっているけど、違う可能性だってあったはず」というメッセージを、地下水脈のように、詩の奥に流しながら、地表の物語は、自由に連想して書かかせていただきました。多くの人がその人生において、さまざまな迷いや苦境を乗り越えるように、そしてそれがすなわち新たな世界を切り開くチャンスであったように、詩のなかで、4人の女の子たちもまた、その強い情熱をもって、いまを超えてゆこうとしています。セクシーで、スタイリッシュで、それでいて、情熱的な、イラストと詩のコラボレーション。2020年のウチダゴウの創作活動にとっても、クリエイティブでエキサイティングな機会となりました。


Main Visual: Hikaru Ichijo
Title Typography: Go Uchida


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